Engage Blues





 ちなみにわたしを『野雀』と呼んだのは、きっと単純な発想だ。

 凰上→鳳凰→朱雀→朱色の雀→雀→地味な鳥……?
 別に間違っちゃいないけど。


「今日こそ、あんたの命日よッ! それが嫌なら、凰上家所有の奥義書を渡しなさいッ!」


 いきなり指を突きつけての処刑宣告。
 そうでなければ、実現不可能な要求。

 横暴すぎる。
 なので、交渉を試みた。

「ねぇ、それ止めようよ。話し合おうよ。何で、最初から暴力込みの二択になるのさ?」


 やんわりと穏便に平和的解決を提案してみる。

 子トラ兄弟相手だと、どうしても力ずくな展開になってしまうけど、なるべく武術に頼りたくない。

 どんな事情にせよ、第三者から見れば暴力には変わりないのだ。

 誰もが納得できる結果を探ろうと言ったのに、美由紀は眉をひそめるだけだ。


「あなた、それでも凰上流闘術の次期師範なの? そんな甘ったれた理屈が通ると思うなんて、鬼龍に次ぐとまで讃えられた凰上家も落ちぶれたものね」


 当然のように鼻で笑われた。
 わたしが宇宙的な空気を読めない発言したみたい。





< 75 / 141 >

この作品をシェア

pagetop