Engage Blues
最初から相手に殴りかかる行動は、果たして正当性のある行為だろうか。
現代日本において、武力を貴ぶなんて時代錯誤も甚だしいと思うのが間違ってるような言い分だ。
少なくとも先進国の中では、平和が大事だという建て前が浸透してきてる。
……はずだ。
大体、同じ流れを汲むと言っても鬼洞家と龍御家は別次元の強さだと聞いている。
いまだに血族婚を繰り返し(もちろん、厳密に何親等以上を離すとかいう掟があるらしいけど)、次期師範には門外不出一子相伝の秘技を伝えているという。
そりゃ、掟と技を大事にしてる一族にしてみれば、わたしなんか落ちぶれた子孫の筆頭だ。
恥ずかしいと思わない時点で、武闘家の精神性は継承されていないのだ。
「じゃあ、そっちの勝ちでいいよ」
「何よ、そのやる気のなさはッ!?」
「人間、平和が一番だよ。むやみに争うのは悲しいことなのよ。きっと」
「武闘家の娘が真っ向から自分の存在意義を否定してどうするのッ!? てか、遠い目して言わない! それ本心じゃないわねッ!?」
ああ言えば、こう言う。
覇気がなさすぎるわたしの意見に、美由紀はいちいち反論してくる。