Engage Blues





 適当な相槌を打ってごまかす。

 単純な力比べなら、美由紀が上だと思う。
 ただし、術の精度、体力、闘気の消費量、など細かい要素と戦闘の流れでいくらでも条件が変わっていく。それが美由紀の情勢を不利にする。

 とはいえ、わざと負けることは許されない。
 手加減したと美由紀にバレたら、さらに勝負をふっかけられるだけだ。

 プライドが高くて不正も許せない難儀な性格なのだ。
 相手にするのは、想像以上に気力と体力、根性を必要とする。


「さぁ、勝負よ、梨花ッ!! 今日こそ、真の勝者は虎賀か、凰上か、決めましょうッ!!」

「えー……」

 やる気満々な幼馴染みを前にしても、いまだに臨戦態勢には移行できない。
 戦う理由がないとかの前に、戦ってはいけない理由が山ほどある。

 そもそも、数ヶ月間なんの音沙汰もなかった彼女が、今になって勝負を持ちかけてきたのか。

「なら、理由を教えてよ。どうして急に果たし合いなんてしたくなったの」

「……あんたが気に入らないからよ」

「なんで」





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