Engage Blues
諸々の事情を全てごまかしましょうッ!
ますます追い返しにくい状態になった。
かといって戦うわけにもいかないし……
うだうだと悩んでる間に、キィッと扉の開く音がした。
もちろん、背後で。
「梨花?」
あ。まずい。
振り向くと、不思議そうな顔した慶さんと目があった。
制服と思しき白いシャツとエプロン姿。
背が高いだけによく似合ってるなぁ。
「どうしたんだ。そんな所で」
うっかり見惚れてる場合じゃない。
何か、うまい言い訳を考えなくては。
というか、何故すぐ思い至らないのか。
地面を陥没させるほどの音と地震に気付かないはずないだろうッ。
混乱状態の頭で必死に取り繕うことを考えていると、歩み寄ってきた慶さんは美由紀に気付いた。
「友達?」
「えぇっ、とぉ……その、幼馴染み?」
素直に「はい」と頷けばいいものを。
訂正し直した単語がまずかった。
慶さんは、わたしと縁深い人物だと勘違いしたらしい。
美由紀と真正面に向き合うなり、柔らかに微笑んだ。