Engage Blues
まぁ、五歳も離れてるし?
あまり考えたくはないけど、それだけ慶さんが以前に付き合ってた女性のタイプと違うのだろう。
また落ち込むようなことを思い出してしまった。
問題は山積しているのに、新たなトラウマを増やすという体たらく。
「虎太郎も虎次郎も、どうしたんだ」
「どうも。こんばんは。若林さん」
「居候先のお嬢さんの付き添いッス」
一方、男たちの挨拶は和やかに進む。
すると、こっちには美由紀が怒りも露わに詰め寄ってきた。
あくまで、小声だけど。
「なんなのよ、あれはッ」
「見れば、わかるでしょ。慶さんって兄貴体質らしくて、簡単に子トラ兄弟を掌握してしまったわ」
ふっと余裕の笑みでかわそうとするも、いきなり左足のつま先に激痛が走った。
「痛ッ!」
「あんた、うちの子たらし込んでどうするつもりッ!?」
そんなの、慶さんに訊いてください。
わたしだって、子トラ兄弟があんな簡単に懐くとは思わなかったよ。
ああ見えて、あの双子は警戒心が強い。コウなんか、いまだに顔を合わせてもそっけなくされる。
美由紀が不満に思うのも無理ないかもしれない。