Engage Blues
けれど、第三者の慶さんはあくまで普通だった。事情を知らないから当然か……。
「せっかくだから、三人も食べていきませんか」
「えッ」
突然の提案に美由紀は面を食らうも、子トラ兄弟は満面の笑みで即答する。
「はい。もちろん」
「ゴチになるッス」
「ちょうどよかった。新作メニューの意見を訊きたかったんだ。ふたりとも、甘いものは平気か?」
「大丈夫です」
「むしろ大好物ッス!」
ごく自然に店内へと促す慶さんは、まるで長年可愛がってる甥っ子たちを相手にしてるようだ。
子トラ兄弟もナチュラルについでいく。
ちょっと慶さんが心配になってきた。
いつもこんな風に会って間もない人たちをほいほい誘って食べさせてるんだろうか。
あの双子は美由紀が絡まないかぎり人畜無害だからいいけど。悪い人に騙されないかが不安だな。
余計なお世話かもしれない心配をしている最中、美由紀が小声で割り込んできた。
「あんたにしちゃ、すごく出来た人じゃない」
「うん。わたしも告白した直後まで付き合えるとは思わなかった……」
「早速、私の前でノロケ? いい度胸だわ」
「痛たたただだッ!」