Engage Blues





「慶さん! 一旦、中に入りましょう。風邪ひいちゃう」

「ん……」


 慌てて店内へ連れ込もうとするも、彼の動きは鈍い。
 わたしのスマートフォンを眺めたかと思うと、またコモドドラゴンを探していた歩道を見つめる。


 まず……気付かれた?

 いや、むしろ当たり前だよな。
 美由紀のことにしろ、コモドドラゴンのことにしろ、気付かないわけがない。


 どう問い質されるんだろう。うまく答えられるかな。

 一抹の不安を抱えて、慶さんの言葉を待つ。


 やがて、無人の歩道を見つめながら、彼はぼそりと呟いた。




「見たかったな。コモドドラゴン」







 よっしゃ。セーフッ!










< 89 / 141 >

この作品をシェア

pagetop