Engage Blues
振り向くと通行人は子トラ兄弟だった。
もう驚くことも怒ることもない。
こうもタイミングよく現れるとなると、わたしの行動パターンを調べ尽くしてるのだろう。
勤務先のレストランから帰り道まで。
「……あんたたち~、いい加減にしないとストーカー被害で訴えるわよ」
唸るような声音で脅しをかけても、双子は動じなかった。
「……もはや、手段は選びません」
「理由はどうであれ、あんたはお嬢を傷つけた」
学生らしい豊かな表情が消えていた。
それに気付いた直後、彼らから放たれる闘気に当てられる。
強風に似た衝撃波に、腕で顔面を庇う。
「手加減、容赦なしッス」
「力ずくでお嬢さんの元へ、お連れします」
背筋に悪寒が走るような、威圧感。
こりゃ、本気だな。
小さく舌打ちして、鞄を放り投げた。
(ようやく本性を現しやがったわね……!)
今までは彼らも身内だからと一応、手加減をしてくれていた。
けど、主人である美由紀が関われば、話は別。
今度こそ真剣勝負をしなければ、死さえありえる。