Engage Blues










「最近、お嬢のイライラが半端ないッス」

「他家が所有する奥義書への執着が度を越してて……」


 双子は、素直に話しはじめた。

 薄暗い路地裏で大学生ふたりを正座させ、仁王立ちで見下ろすこの絵面。

 わたしを変な趣味に目覚めさせるつもりなんだろうか。


 それはともかく、美由紀が荒れてるってことは、こっちにとばっちりが来るのがお約束だ。
 無関係ではないので、探りを入れる。



「プライベートで何かあったの?」

「お嬢、フラレたんスよ」

「お嬢さんは結婚も考えてたらしいんですが、浮気された挙げ句に『おまえは強い女だから俺がいなくても平気だろうけれど、あいつには俺がいなくちゃ駄目なんだよ!』とか言われてしまって……」


 あちゃあ。
 ざまぁみろとは思えない。

 明日は我が身だ。
 わたしだって、慶さんに同じことを言われるかもしれない(バレたら)。



「それは、お気の毒ね……」

「うす。告げられた時のお嬢の心中を思うと何も言えなくて」

「なので、お嬢さんのかわりに八つ裂きにしておきました」


 災難だったな。元彼。






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