Engage Blues
突然すぎる宣戦布告に、覚悟を持てませんでした。
短気な美由紀のことだから、すぐにまた襲撃してくるかと思ったけれど。
この三日間は、手出しして来なかった。
再び、定休日の火曜。
何事もなく過ぎた一日の終わり。
夕飯の支度中にみりんが切れていたことが発覚する。
慶さんは、夜道は危ないからいいと言ったけど、近くのスーパーまで買い物に出かけた。
結局、また食事の準備は彼がしているので、お使いくらいしなければ。
他に買い忘れがないか確認している最中、着信メロディーが流れる。
買い物の追加かな。
鞄からスマートフォンを取り出して、口をへの字に曲げる。
画面に表示された名前が、慶さんじゃなかったからだ。
憮然とした面持ちのまま、スマートフォンを耳に当てる。
《ハーイ。こんばんは、梨花》
「……なんか用?」
ぶっきらぼうに訊ねても、美由紀の声は弾んでいた。
《そう邪険にしないでよ。食事でもしない? 奢るわよ》
「どういう風の吹き回し?」
ちっとも反省してない態度から、彼女の目的はわかりきってる。
食事も口実だろうとあからさまな警戒をしても、美由紀は余裕だった。