時間の中で
序章
───・・・
俺は確かにそこにいた。
愛おしい女の側に。
四六時中一緒で、目を開けたらすぐにアイツがいて・・・
幸せだった。
いつも花の香りがする。
俺の鼻腔をくすぐる匂い。
「あ、やっと起きたんだね」
やさしい声で、そう告げる。
「・・・どうしたの?」
彼女はクスッと笑い、俺の方をじっと見る
「いや・・・何でもないよ。」
「嘘つきね」
そう呟くと、さらにこう続けた
「あなたが嘘をつく時って、だいたい手をいじるんだからね」
お見通しなんだから、と彼女は言う。
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