星たちの光
星たちの光
 あの日は、天鵞絨のような夜空だった。そして、星が満開に輝いていたんだ。けれど、いまは、さびしいくらいで、数えられるほどの星たちが点々と見られるばかりなんだ。
 じゃあ、なんで? って思った人たちのために、これから、お話ししよう。
 優しい星たちは、毎晩、下界を見守っていた。それは、どうしても気がかりな女の子がいたからなんだ。
 そこで、ひまわりのように明るい星は、こう言った。
「いつになったら、あの子は、幸せにおなりになるのでしょう。いつもお可哀想に、母親からも、子供たちにも、いじめられているのです」 
 その女の子はいつも母親から、毎日のように頬を叩かれていた。頬は真っ赤で、目は涙でいっぱいになっていたんだ。
「本当に、お可哀想に」と、ほかの星も言っていた。
「それでは、こうすればいい! 私たちの光を分けてあげるのよ」
 こう言ったのは、星たちのお母さんだった。
すると、「それはいい手だ」と、みんな揃ってうなずきあった。
 そんで、お優しい星たちは、自分のことなんかちっとも考えていなかった。とにかく、女の子のためを考えるのに、必死だったんだね。
 この深夜、今日も女の子は寝つくことが出来ないでいた。
 嫌なことばかりが、のしかかってしまうと、どうしても不安で寝られないみたいだ。
 でもね、何気なく窓のそとを見つめていると、女の子は、びっくりしてしまった。
 だって、こんなにも黄金に輝く夜空は見たことがないものね。やがて、その光は女の子の頭の上に振りかけられて、身体中が黄金色になった。それはもう、目が開けられないくらいに、まぶしかったよ。
 とっても気分がよくなった女の子は、光の粒を掌にのせながら、ほほえんでいた。
ああ、よかった、よかった! やっと笑顔になったのだから。
 そうして、だんだんと、安心しきった女の子は、やっと床につくことができたんだ。
 それから、女の子がどうなったかって? 女の子は、たいそう幸せになったそうだよ。
 翌朝、起きたら、母親が反省して何度も女の子に抱きついて、謝ったんだ。そして、近所の子供たちも、みんな、悪いことしたって思ったんだね。女の子に泣いて誤っていたよ。心優しい女の子は、辛い思いをしていたのに、笑顔で許してあげていた。それは、感心なものだったよ!
 女の子がしあわせいっぱいになっていくと、カラスみたいに真っ黒な夜空には、星たちの光がどんどん消えていったんだ。
 優しい星たちは、自分より、ほかの誰かのことをちゃんと考えていたんだね。
 いいかい? 確かに、自分も大切だ。でも、ほんとうに大切なことを忘れちゃいけないよ。自分も生きているなら、周りのひとだってまた生きている。だから、助け合って生きていくんだ。そんで、ときには、自分を犠牲にしないといけなくなることもあるはずだ。
 ほら、ごらん! 星たちのおかげで暗くなっていた女の子は、きらきらと輝いているのだから! ――(おしまい)
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