私は、アナタ…になりたいです…。
自分で告白しながら、かぁ…と顔が熱くなった。

俯いたまま彼のコートの袖を握りしめる私を、彼が優しく抱いてくれる。


寒気を感じていた背中があったかくなる。

ほっとした温もりに包まれていたら、親指で顎を押し上げられた。



ビクンッ!と背中が仰け反った。
背筋を引きつらせながら、背骨が急に伸ばされる。


柔らかなものが唇の上に乗った。
熱い息を吹きかけられて、大きな手が頬を包み込んだ。

親指で下ろされた下顎との隙間に、彼の舌先が侵入してくる。

そっ…と入ってきた舌の先は、前歯にぶつかりながら奥へ進もうとする。
逃げ出したくなる私の背中を押し付けて、彼が自分の方へと引き寄せた。


ばくばく…と脈を打つ速さに震えながら、初めてのキスを交わした。

キスは一度だけじゃ収まらなくて、何度も何度も角度を変えて寄せられる。

全身が細かく震えだし、とうとうふくらはぎのヒラメ筋までが震えだした。


「はぁ……」という深いため息を漏らし、彼が離れた。
ようやく解放された唇には、ヒリヒリとした痛みだけが残った。



「ごめん……やり過ぎた……」


唇を触る指先にビクつく。
すっかりキスに惑わされてた私は、そんな軽い行為ですら感じやすくなっていた。



「…駅まで送るよ…」


差し出された掌に指先を乗せる。
電流でも走るかの様な感覚に包まれながら、初めて彼の腕に手を通した。

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