私は、アナタ…になりたいです…。
田所さんは自分の苦しい胸の内を話しながら、これまで以上に切なそうな表情を見せた。

唇が微かに震えて、目の奥が潤んでいるようにも思えた。



「馬鹿みたいなこと言うけど……君が妊娠して僕の目の前から消えてしまうんじゃないかと思うと、容易に手も出しづらかった。
それでも君が隣にいると、その気持ちとは逆の思いも生じてきて、居た堪れなくて避けてしまった……」


「ごめん…」と謝る彼に、無言で首を横に振った。
そんなに求めてくれていたのか…と内心を知り、恥ずかしいけれど嬉しくもあった。


「で、でも…私は自分のスタイルに自信は無いですよ⁉︎ 田所さんのお母さんみたいにキレイでもないし…」


風邪も引かないくらい体力にだけは自信がありますけど…と言うと、プッと吹き出された。


「僕も滅多に風邪は引かないよ。僕の義母は看護師で、健康管理には人一倍厳しいから」


柔らかな笑顔を見せられた。初めて聞くお義母さんの話を田所さんはもう少しだけ続けた。


「義母は亡くなった生みの母の助産師をしてたんだ。妊娠中期から母の出産に関わっていて、父のことも母のこともよく理解していた。
だから、母があんな亡くなり方をしたのをとても気に病んでいて……僕のこともまるで、自分の子供のような気がしてならなかったと言ってたそうだよ」


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