私は、アナタ…になりたいです…。
気の早いことを言う自分に驚きの眼差しを向け、彼女の顔が一気に赤くなった。
照れくさそうに微笑む顔が可愛くて堪らない。
その顔に思わず近付いた。


「僕は……今の咲知の顔が一番好き。君に憧れ始めたのは、受付で見せるその笑顔だった様に思う。
「行ってらっしゃい」「お疲れ様です」…って、いつも照れくさそうに言ってくれてたから…」


きゅっ…と肩を窄めて彼女が小首を傾げた。

小鳥がはにかむ様な仕草も何もかも、全部が僕の憧れだ…と思った。


「君は僕に無いものを持っている。母に君を重ねた時、言い様も無いくらいのコンプレックスも感じたけれど、本当はそれも自分がなりたくてもなれない事を知っているからだ。
…僕は君になりたいと思う時もある。…でも、それよりも何よりも君に側に居て欲しい。
僕の隣にもう一度立って欲しい。都合の良いことばかり言うようだけど…どうか、お願いします……!」



< 139 / 147 >

この作品をシェア

pagetop