私は、アナタ…になりたいです…。
私は、アナタ…になりたいです…。
これは………夢………?
それとも……現実………?
どちらか判別しづらい。
私の意識が薄れて、何もかもがはっきりしないせいだ…。
どこかで規則正しい音が鳴ってる。
喧しいくらい、耳障りな音を立てている。
カチャカチャ…と金属の音もする。
お腹の辺りがグチャグチャと、嫌な音を立てている。
熱いような気もする。
でも……変ね。
どうしたのかしら。
手も足も、違和感のあったお腹でさえも感覚がない。
意識だけが、スーッと身体から引き離されていく感じ。
何かに引っ張られて、まるで、上へ上がっていくみたい。
(…どこへ行くのかしら、私……。これから子供を産んで育てて、そして、愛する人と一緒に、年を重ねていくつもりなのに……)
ピーッ!という警笛の様な声がした。
嗚咽する泣き声が聞こえる……。
(誰の声…?泣いてるのは誰……?)
「子供は助かったぞ!」
「早く保育器へ!」
「母親は⁉︎ 」
「ダメだ!血圧が低すぎる!」
「…くそっ!胎児は助かったのに…!」
「美和さんっ!しっかりして!」
聞き慣れた担当看護師の大賀さんの声がする。
「家に帰りたい…」と、何度も何度も頼み込む私に、手を焼いていた人だ。
(ごめんね、大賀さん…)
心の中で謝ってばかりいた。
子供を産んだら、一緒に写真を撮ろうね…と、約束した。