私は、アナタ…になりたいです…。
「は、はいっ!」
ビクついたように背筋を伸ばして胸を張る。
オシボリ袋をつまんだピンク色の爪の先が、微かに震えているようにも思えた。
「そんなにビクつかなくても大丈夫だよ。もっと気楽に…」
言いかけてハッとする。俯き加減だった彼女の顔が、今にも泣きだしそうだった。
「き…気楽になんてムリです…。今ここにこうして座ってるのですら、精一杯なんですから……」
震える指先でオシボリの袋を破ると、中身を取り出してギュと両手でサンドした。
神経質な感じで指を拭き、自分を落ち着かせる様に息を吐いた。
「すみません……田所さんのような方とお店に入ったの初めてで、とても…緊張してしまって……」
連絡してきたことを後悔している様な言い方をして、視線を左側に逸らす。
僕にとっては女性と二人で食事することは珍しくもないから、そんな気持ちの彼女に対して何処か無神経なところがあったのかもしれない。
「気にすることないよ。…それより今日は僕が奢るから、何か好きな物注文して」
スッと差し向けたメニューを奪いとり、彼女はさっと僕の方に向きを変えた。
「今日は私が払います!昨日ぶつかったのは、私の方ですから!」
顔を上げて訴える彼女と目が合って、つい、いつもの様に微笑んだ。
戸惑うような表情を見せた彼女は、頬を紅色に染めていく。
一つ一つの仕草がいちいちキュートでたまらない。
大柄の僕にはできないようなことを、彼女は簡単にやり遂げてしまう。