私は、アナタ…になりたいです…。
「まさか、あれ…本気だったの……?」


起き上がって田所さんのメールに見入った。
暫く画面を見続けて、トントン…と文字を打ち返した。



『電話番号、必要ですか?』

彼の本気度を確かめるつもりで送信した。
間もなく返ってきたメールには、困った様な顔の絵文字があった。


『知らなかったら連絡できないので困ります。教えて下さい』



きゅん…と胸が締め付けられた。

田所さんの困った顔を想像しただけなのに、どうしてこんなに胸が苦しくなるんだろう。

胸の疼きを抑えながら、スマホの画面をタップした。



『電話番号は……』


ポチポチ…と数字を打つ指先が震えた。
送信ボタンを押した後、ぎゅっと目を閉じてスマホを抱き締めた。


憧れの人に自分のメールや電話番号を教える……
それは今までの自分の人生の中では絶対にあり得ないことだった。


あり得ないことが起ころうとしている。
今送ったメールは、その奇跡の第一歩のような気がする。


胸の中に抱いていたスマホから着信の音楽が鳴り響いた。かなり慌ててしまい、思わず投げ出しそうになってしまった。


もしかして…と思いながら画面を見つめ直した。
そして、やっぱり…と思いつつ、通話ボタンを押した。



「もしもし……河佐です……」


服の下で心臓が大きく跳ね返っている。
右手でその臓器を押さえながら、左手はスマホを力一杯握りしめた。

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