私は、アナタ…になりたいです…。
黙々とサンドイッチを食べながらその景色を彼と自分に置き換えてみた。

葉をくっ付けて立っている樹木が田所さんで、落ちていく葉っぱが私。

木からすれば大したことのない存在。
ただ、もの珍しいだけだ。


(バカな私…田所さんにはあんなに沢山取り巻き女子がいるのに……)


自分に憧れたのも単なるもの珍しさがあったからに違いない。
チビで痩せっぽちで近眼な私に、少し興味が湧いただけなんだ。


考えれば考える程落ち込んで、目に涙が溜まってくるのは何故だろう。
田所さんのことを考えて、これほど胸が痛くなったことなどないのに。


ぐすっ…と鼻を鳴らした。
一回それをしてしまうと、何度か繰り返さないと収まらなくなる。

サンドイッチを食べるのもそこそこに、私は鼻をすすりながら涙を拭いた。


「目…痛……」


呟きを口にしながら自業自得だと言い聞かせる。
誰が悪い訳でもない。自分自身が泣くからだ。




「大丈夫?」


声にビクついて背中を伸ばした。
目の前に来た人が、膝を折り曲げて視界に入る。


サラサラの前髪が風に揺れてる。
心配そうに見つめる黒目は、朝よりもさらに近い距離にあった。


「た、田所さんっ!」


ぎょっとして仰け反った。
大きな声を出してしまい、慌てて口を噤む。
キョロキョロと周囲を見回して、誰も知った人がいないことを確かめてから聞いた。


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