私は、アナタ…になりたいです…。
じぃーっと見つめる先には、幅50センチ程のローラーの波。
シルバーに輝くローラーは機械油か何かを塗られているせいで、いつも異様に光っている。

その光をまともに見過ぎると、返って股越せなくなってしまう。
目がチカチカして距離が掴めなくなるんだ。



ローラーの反対側から向かい側のセメント面を見やっていた。
軽く一歩、大きく足を踏み出せばいいだけなんだけど……


(掴めないなぁ。今日は…)


目が疲れている時はいつもこんなだ。幅50センチが見当つかない。だから、いつも立ち往生する。



「…さっちゃん、またかい?」

声をかけてきたのは、受付チーフの佐藤さん。
これまで何度も私の立ち往生を見ていて、困っている時は助けてくれた。


「ローラーの光が目に入り過ぎて…幅が掴めないんです…」


泣き言を言う私の向かい側に立ち、手を貸してみなさい…と腕を伸ばす。
50代のチーフに手を貸すのは、父親に手を貸すのと同じくらいの感覚なんだけれど……。


「いいです。足を出すので、跨げそうかどうかだけ教えて下さい」


いつもと同じように親切心を拒否してしまった。
左足を上げ、ローラーを股越そうとした私の右腕を掴んで、「そのまま越えていいよ」と言う声がした。



(えっ⁉︎)……と振り返ったと同時に、ふわっと体が浮くような感じがした。
踏み出した左足はきちんと向かい側の地面に着地して、右足が後からついてきた。

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