私は、アナタ…になりたいです…。
両足が向かい側の地面に着くと、直ぐに右腕は解放された。
掴んでいた人は笑みを浮かべ、「上出来!」と声をかけてきた。

チーフの佐藤さんがその人に話しかけ、楽しそうに笑っている。




「……あ…ありがとうございます………田所さん…」


背の高い人の頭のてっぺんを見ながらお礼を言うと、チーフと話していた人は目線を下げ、唇の端を持ち上げる。

眩しいライトが後光のように差し込んでいる中で見る人は、まるで救世主か何かのようだ。



「さっちゃん、いつも言うだろう?慣れないコンタクトなんかするもんじゃないって」


佐藤さんの言葉は、私をオロオロと狼狽えさせる。
これまでもコンタクトに変えて失敗したな…と、幾度となく思った。


「で、でも、私はメガネ似合わないし…」


顔のパーツが真ん中に寄り過ぎて、メガネをかけると更にそれが強調される。
どうしてもそのことが気に入らなくて、会社に入社した時、思いきってコンタクトに変えたんだ。


「しかし、時々痛そうにしているし、合わないんじゃないのか?」


父親のように心配してくれるチーフには申し訳ないけど、これは私のこだわりでもあるから譲れない。


「平気です。今日はたまたま幅が掴めなかったけど、いつもはどうにかなってますからっ!」


少し強めの口調で言いきると、頭の上からくっと笑い声が聞こえた。
ちらっと見上げる視線の先にいる人が、口元に右手をあてている。

苦笑している時の田所さんの癖。この最近、じっくり見るようになってから気がついた。


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