私は、アナタ…になりたいです…。
子供の頃から人に見られるとなると、まずこの小さな身長が先立った。
成長期にグングン背を伸ばしていった友人達と反比例して、私の成長は中学生で止まりそれ以降はほぼ伸びもしていない。

おまけにひどい近眼で、メガネがないと殆ど何も見えない。
コンタクトレンズに変えた今では視界も大分クリアになったけれど、裸眼のままだと2メートル先も怪しい感じだ。

そんな私に向けられる目はいつも同じ。

『幼い』『メガネっ子』『小っさーい』

それ以外に見られることなんて、ほぼ皆無。

美人でもなければ可愛くもない。成績も中くらいだったし、運動もどちらかと言えばニガテ。
そんな欠点だらけの私に、羨望の眼差しを注ぐ者はいなかった。




「さっちゃん、お昼行っといでよ」


チーフの佐藤さんがやって来た。


「ゆっくりしておいで。今日は午後から来客の予定も少ないし」

近藤さんからも手を振られ、それじゃあ…と持ち場を離れる。


私物の置いてある地下のロッカールームへと急ぎ足で進んだ。
あまり目立った行動はしたくないけど、今朝からずっと目に異物感があって早くコンタクトを取り外したくて仕方なかった。


ロッカールームのドアをノックして中に入り、間仕切りのカーテンを開けた。
化粧品の匂いや制汗剤、香水の匂いが入り混じる空間は、私が一番苦手とする場所だ。
くっ…と一瞬息を止め、間仕切りに近い自分のロッカーへと近づいた。

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