私は、アナタ…になりたいです…。
「どういうこと⁉︎ 」


泣き叫びたい気持ちで電話した。
彼は面倒くさそうに溜息をついてーー


「遊びだってすぐに気づけよ。お前みたいな女、俺が本気で相手にする訳ないだろ⁉︎ 楽しく遊べればそれで良かったんだよ。その為の金なら幾らでも出してやれたのに…」


処女喪失させてもらっただけでも有難く思えよな…と、最低な言葉を吐かれた。

子供の遊び道具みたいに、私を弄んで捨てた……。



酷い奴…と思いながらも、なかなか忘れられなかった。
嫌な思い出と甘い思い出とが交互に繰り返されて、とうとう他の恋ができなくなった。


会社に入ってそれなりに飲み会やコンパにも誘われたけど、あの頃の苦い経験が邪魔をして他の男性と会おうという気になれなかった。


田所さんのことも、まるで漫画か映画に出てくるキャラや俳優のように憧れるだけで良かった。

自分にはない煌びやかで華やかな容姿と雰囲気をただ眺めてるだけで幸せだった。


付き合ってみて…とか、チャンスを与えて…とか、言われる様な存在ではない。
いつかは誰かに捨てられて、振り向きもされない自分なんだ…ということを実感していたーー。




(……でも、田所さんだけは違うと思いたい……)



亡くなったお母さんのことを話している時、とても切なそうな表情をしていた。

単なる悲しみだけじゃなく、何か他の思いも抱えてるように見えた。


あんな大きな人なのに小さな子供みたいに思えた。

それがどうしてなのか、【ワケ】が知りたい…と思ってしまった。


< 73 / 147 >

この作品をシェア

pagetop