私は、アナタ…になりたいです…。
肩を怒らせて豪語する近藤さんの迫力に押されながら、ははは…と笑ってごまかした。


「でも…私、食事量そのものが人よりも少ないし…誰かとシェアして食事するのも、やっぱり苦手で…」


言い訳して逃げようとする私を近藤さんは逃すまいと言葉巧みに誘いをかける。
どうやら一緒に参加してくれる人がいなさそうで、私に白羽の矢を立てたみたいだった。



「楽しそうですね…」


聞こえた声に振り向いた。
受付の正面に立っていたのは、長身の彼だった。


「お、おかえりなさい。営業お疲れ様でした!」


いつものように挨拶すると、その人はにっこりと私達に笑顔を向けて近寄ってきた。

雨粒でスーツの肩が濡れている。それが気になり、思わず声をかけた。


「田所さん、肩が…」


ハンカチを取り出そうとして、彼が素早く手で払った。


「外の雨、結構降ってるの?」


来客用のハンドタオルを手渡して近藤さんが尋ねる。


「降ってますよ。帰りもまだ続くようなこと言ってましたし、傘は必需品かもしれないですね」


肩と袖を拭き、ありがとうございます…と言ってハンドタオルを返す。
スマートな対応に見惚れながら、自分の肩を手で払った田所さんに少しむっとしていた。


付き合って…と言われて承諾したのに、社内では秘密にしたい…と言ったのは私。
だけど、取り付く島もない彼の今の対応は、余りに素っ気なさ過ぎて冷たい…と思った。

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