私は、アナタ…になりたいです…。
「す、すみません…ちょっと目が痛いからコンタクト外してきます…」


ごめんなさい…と目頭を押さえてその場を走り去った。
急ぎ足でロビーを駆け抜けて、エレベーター横の階段まで辿り着く。

こんな時ばかりは、コンタクトにしていて良かった…と思う。階段横の壁に背中を凭れて、崩れる様にしゃがみ込んだ。


みっともない対応を見せてしまった。

田所さんはいきなり泣き出した私のことを見て、なんと思っただろう。
後からメールや電話で聞かれたら、なんと言って答えればいいか。


(嫉妬してたんです…なんて言える訳もない。そもそも、まだそこまでの関係じゃない…)


たまにメールや電話を交わして、食事に行ったのも2回きり。
付き合い始めたばかりの私に、田所さんの休みの行動を制限する権利はないんだけど…。



(……断って欲しかった……)


街コンに行けば、いろんな女性と触れ合うことになる。
私みたいなのよりも、もっと素敵な人に出会えるきっかけになる。

今ならまだ間違ってました…で済む。
その方がきっと、私にとっても彼にとってもベストなんだ。



(頭じゃ分かってるのに…)


気持ちがしっくりこないのは何故だろう。
いつまで経っても、涙が乾かないのはどうしてだろう。


(…我ながら…情けない…)


今だけじゃないか…と思い直して立ち上がった。
下を向いたまま階段を下りようとして、トン…と誰かにぶつかった。

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