私は、アナタ…になりたいです…。
コンタクトを外しメガネを掛けてから受付に戻ると、近藤さんはつまらなそうな顔でボンヤリと外を眺めていた。

外の雨音は、中にまでは響いてこない。
でも、白っぽく煙る景色を見ていると、雨足はさっきよりも確実に強くなっているみたいだった。



「おかえり。目はもう大丈夫?」


私に気づいて声をかける。さっきのテンションの高さは何処へ行ったのか、ふぅ…と小さな息をついた。


「近藤さん…何かあったんですか?」


あまりの調子の違いようが気になって聞いた。近藤さんは「まぁね…」と呟き、もう一度大きく息を吐いた。

何事…?と思いながら顔を見つめた。食い入るような私の視線に気づき、仕方なさそうに近藤さんが話し始める。


「…さっきね、『スマイル王子』に彼女はいるの?って聞いたのよ。街コンに参加してくれるってことは、少なくともそういう関係の人はいないんだろうと思ったから。なのにね…」


残念そうに肩を落とし、近藤さんは天井を見上げた。


「つい最近付き合い始めた人がいるんだって。街コンはその人と一緒なら参加してもいいかな…と思ったって。だから彼女持ちならお断り!と言っといた……さっちゃんどう思う?ショックでしょ⁉︎ 」


下ろされた視線に戸惑った。彼女という言葉に、敏感に反応してしまった。


「えっ⁉︎ そ、そうですね… 」


背中に冷や汗をかく。田所さんの考えを他の人から聞くことになるなんて、思いもしなかった。


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