私は、アナタ…になりたいです…。
「どうだろう…?」と問いかける彼の言葉を慎重な面持ちで伺っていた。


田所さんの目は、優しそうな光を湛えている。
何を言っても怒ったり驚いたりはしなさそうだな…というのは、その眼差しを見ても思った。


息を一つ吐いて、声を出そうとした。
乾いていた喉に引っ掛かっている声は、なかなか出てきてはくれない。


もう一つ大きく深呼吸をしてみた。

受付で挨拶をする時のような気持ちで、声を前に押し出した。



「あ、あの…私……」


何を話せばいいのか迷った。
今しがた彼に言われたことは図星以外の何モノでもない。
言いたかった事を先に言われてしまい、何をどう切り出せばいいのかも分からない。

し…んとしてまう間が嫌だった。重くなっていく空気が一番嫌い。

だから……



「私、今日とても嫌な気持ちになりました!」


力んで話しだした声が、必要以上に大きくなってしまった。

焦って口を噤んだ。ゆっくりと息を吐いて、胸の鼓動を鎮める様に落ち着いたスピードで話し始めた。


「田所さんが街コンに誘われた時、すんなりOKしたのを見て、(ああやっぱり私なんかと付き合ってても仕方ないんだな…)と思ってしまいました…。いろんな方と出会えるきっかけが欲しんだろうな…と、勝手に考えてしまったんです。あ、雨の雫も……拭かせてもらえなかったし……」


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