私は、アナタ…になりたいです…。


ドキン…と強い胸の音を鳴り響かせながら、心臓が動き始める。
声もすぐに出せなくなり、テーブルの下に目線を下ろした。



「た、田所さんのこと……好きだと思うんです。……でもハードルが高過ぎて、どうしようもないくらいコンプレックスを感じてしまって……」



……ずっと、憧れてきた人だった。
入社式で初めて目にした時から、高嶺の花だと思ってきた。


遠くから眺めるだけで良かった。
見ているだけで、幸せな気分に浸れる時もあった。

でも、多くはやっぱり劣等感に結びついて、どうしようもなく固い殻から抜け出せない自分を感じていた。


「私は…人よりも小さくてスタイルも悪くて…。美人でもないし、性格もこの通り後ろ向きだし。子供っぽくて周りからはいじられてばかりいるし…自信も何も…持ってないから……」




(相応しくないんです…)


口に出そうとする言葉を言えなくて呑み込んだ。

頬杖をついて聞いている彼のことを諦めるのは、やはり難しい…と思った。



言葉を探しながら視線を彷徨わせた。
胸の動悸を確かめながら、意を決して話を続けた。


「……田所さんの彼女としていることは、私にはとても勇気が要ることなんです。相応しいものを何も持ってないし、劣等感ばかりが身に付きまとうし。……田所さんは素敵過ぎるから、私よりももっと素晴らしい人が似合うと思うんです……」


自己否定を繰り返しながら、それでも諦めきれない自分がいる。
分不相応だと分かってはいても、やはり手離せない…と感じている。

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