私は、アナタ…になりたいです…。
この間は落ち着きのある路地だなと思いながら歩いたけれど、今日は田所さんが水路に落ちはしないだろうか…と、そればかりを気にして歩いた。


「ごめん。…完全に悪酔い。少し酔い覚まして帰ってもいい?この先にカフェがあるから、そこ行こう…」


行こう…と言ったものの、あいにくお店は休みだった。
田所さんはとにかく少し座らせもらおう…と、店先に積んであった椅子を二脚並べた。

雪崩れ込む様に座り込んだ彼に、自販機で買ったペットボトの水を手渡した。



「…ありがとう…」


外気に触れて幾らか白くなってきた顔色にホッとした。
田所さんはペットボトルのキャップを開けて、ゴクゴクと喉を鳴らしながら飲み込んだ。


はぁー…っと大きく息を吐いて、何かを考え込んでいるような表情を浮かべる。
さっきの「ごめん…」と何か関係があるのだろうか…と思い、黙って様子を伺った。





「………田所さん…?」


左側に座っていた人が、いきなり肩を凭れてきた。
田所さんは私を振り返り、寂しそうな目をして笑った。


「さっき、河佐さんのお母さんの話を聞いてて、自分を産み落とした母のことを思いました…」


笑いもせず見つめられた。
私ではなく、亡くなったお母さんを見ているような眼だった。



「前にも言ったと思うけど、母は僕を産んでから直ぐに亡くなりました。正確に言うなら、死にながら産んだ…という方が近い。帝王切開前に胎盤が急に剥がれだして、大量出血を起こしたから……」



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