強引上司とオタク女子
「それ、ガセですよ」
「なんだ、違うのか? 今日遅くなることをメールしてたんだろ?」
「メールはしてましたけど。……友達にだし。私に彼氏なんているわけないじゃないですか」
「なんでだよ」
「だって」
私、男は二次元こそが最高って思ってるし。
三次元の男の人はなんか別世界の人って感じしかしないし。
男よりもアニメやマンガがいい。
テレビ画面や紙の上で広がる、想像を超える世界。
リアルではあり得ないような特殊能力を持っていたり、麗しい容姿で私達を魅了する。
それでもリアルの人間のように些細な事で悩む姿に、キュンとなって守ってあげたい欲求が湧いてくる。
それを分かち合える友達・明日美と話しているだけで、私は充分幸せなんだから。
想像の翼を広げていたら、野太い声が現実に引き戻す。
「……なんで黙るんだよ。俺がいじめてるみたいじゃないか」
「いじめてるじゃないですか」
現状をよく見ろよ、三次元男子。
修羅場見られたくらいで、厳しくするとか最低。
「いじめてなんかない。とにかく、今日はマニュアル仕上げるまで帰るなよ」
「分かってますってば!」
でも残業はさせるのね。やっぱり意地悪じゃん!
あああああ、もうとんだとばっちりだよ。