強引上司とオタク女子
私と明日美は、いわゆる二次創作漫画というものを作っている。
私がシナリオ、明日美が作画担当。
会社には内緒にしてるけど、ネットで公開したりコミケで販売したりしているのだ。
今日の約束はその打ち合わせを兼ねていたのだけど。
スマホからふと顔を上げると国島さんとバッチリ目があった。
「げっ」
国島さんの口が音無く動く。
「お」「お」「お」「あ」の口の形。
何言ってんだあの人。
今まで言われた言動からしばらく考えること数分。
先ほどトイレ前で言われた『男か』の言葉に思い当たる。
「違うし、しつこいし」
小声で言い返す。距離的に国島さんには聞こえまい。
……と思ったのに、言った途端に彼は眉間のシワを濃くし、目を細めて私を睨む。
怖いってば。
畜生、リア充め(まあ振られていたからリア充ではないけど)
さっきからつっかかってくるな。
国島さんが振られたのは私のせいじゃ無いじゃん。
見ちゃったのは不可抗力だし、まあ資料が仕上げられないのは私のせいだけどさ。
でも、それだってそこまで威圧される覚えないし。
こんなんじゃ仕事に集中できないよ。
ますます遅れちゃうじゃないか。
こんな時に必要なのは癒やし! 癒やしだよ!
私は机の陰でコソコソとスマホの画像ファイルをいじる。
この間インストールしたコラージュアプリで作ったやつがあったはず。