強引上司とオタク女子
「たりーから謝っとこうってのが見え見え。言っとくけどな、今日のノルマは今日のうちにだ。これが終わるまで帰んなよ」
「なっ」
なんですとー!!
なんなのよ、何の嫌がらせ。
納期が迫ってるわけでない、明日でもいいじゃん。
なんでわざわざ今日残業しなきゃならないの。
「こんなもん二時間もありゃ余裕で直せるだろ? あ、それとも川野にはそんなに難しいか?」
「なっ……。分かりましたやりますよ。やりゃいいんでしょ」
「おう」
奪うようにして書類を取り返して、その赤字の多さに愕然とする。
……無理っ。
やる気が一瞬にして抜けていく。
こんなの終わんないよー。
「シュミレーション……か」
ダメな時を想像するのは苦手だ。
だって考えたって落ち込むだけじゃない。
誰だって、悪い想定ができるときは動かないもんでしょう。
川べりで子供を遊ばせないのとか、安定感の無いものには登らないとか、……振られると分かっていたら告白しない、とかさ。
「はあ」
チラリと見れば、鬼の国島もディスプレイに向かって何やらしている。
帰ればいいのに、帰んないのか。
ああ、見張りがついていたらサボれもしない。
仕方なく、私は真面目に赤字を読み込んで修正を加えていった。