強引上司とオタク女子




いつの間にか集中していたらしい。

隣に人の気配がして手を止めて、見上げれば国島さんが立っててびっくりした。


「ぎゃっ」

「ぎゃってなんだよ。コンビニスイーツだけど食わないか?」

「え?」

「夕飯食いっぱぐらせたのは悪いと思ってるよ」


袋の中には、サンドイッチとプリンが入っている。
え? くれるの?


「あ、ありがとうございます」

「俺、コーヒー飲みてぇ」

「入れましょうか」

「んー。それ言い出すの待ってた」


待つくらいなら自分でやればいいじゃん。
イマドキお茶くみが女の仕事だなんて流行らないよ。

まあでも、貢物を貰ったので大人しく入れよう。
そうすれば私も休憩できるし。


「こっちだ。川野」


国島さんが会議用スペースを確保していてくれる。
まだ仕事で残っている人は数人いるので、私たちは隠れるようにしてパーティションで区切られた空間に入った。


「国島さん、ミルクとかいりますか」

「いらん」

「じゃあ私だけ」


砂糖とミルクをたっぷり入れてかき回す。
糖分不足だよ。疲れちゃった。

国島さんはゲテモノでも見るような目つきを私のカップに向ける。


「そこまで入れたらもはや珈琲じゃなくね?」

「これが美味しいんですよ」

「甘すぎだろ」

「いいじゃないですか。人の好みに文句つけないでくださいよ」

「へぇへぇ、悪かったよ。で、出来そうなのか」

「あと少しです。……頂きます」


貰ったサンドイッチに噛みつく。
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