強引上司とオタク女子
「まあいい。帰ろうぜ」
「はあ」
嫌だな、やっぱり一緒にいかなきゃいけないのか。
今日は厄日だ。
なんでこんなことになっちゃったのだろう。
「……昼間のことだけどさ」
ビルを出てから、国島さんが改まった様子で話しだす。
やっぱりその話したいから一緒に帰ろうだったんだよね。
まあ話す内容がないのも気まずいから嫌だけどさ。だからってその話題もどうよ。
口止めなんてされなくたって誰にも言わないよ。興味無いもん。
「見てませんよっ、私」
「嘘つけよ」
「知りませんって。ただ落とした小銭を拾おうとしただけなんです。そしたら、国島さんと梨本さんがくんずほぐれついただけでっ」
「誰がくんずほぐれつだよ!」
勢いよく頭をどつかれる。
やめてよー。
今日はただでさえいつもより頭使って疲れてるのに!
私が小さく呻きながら痛がっていると、国島さんは気まずそうな顔をして私の頭を撫でた。
「……悪い。痛かったか」
「痛いですよ! もうちょっと容赦しましょう」
「はは。おかしな奴」
乾いた笑いが響いたかと思うと、国島さんはポツリと話しだした。
「……梨本とは、二年くらい前から付き合ってんだよ。あいつ、大学が仙台なんだ。俺が仙台で仕事してる時に、とあるイベントで知り合った」
なぜ身の上話をする。
そりゃ見ちゃったのは私だけど、そこの詳細まで聞きたかったわけじゃないのだけど。