強引上司とオタク女子
「……分かりましたけど、なんでそれを私に言うんですか。私、誰にも言いふらしたりしませんよ」
ネタにはするかもしれないけど。
それは国島さんとは別世界の話だから支障ないっしょ。
サラリと言った私を、国島さんは片眉を上げて見た。
何か言われる前に、私はこれ以上話を引き伸ばされないように勢いよくまくしたてる。
「恋愛事とか興味ないんで。誰が誰と付きあおうが、気になりません。それに、国島さんだって、仕方ないで済んじゃうくらいの気持ちなんでしょう? もういいじゃないですか。国島さん仕事できるし、すぐ次の人見つかりますよ」
一応イケメンだと騒がれているしな。
口の悪さと性格の悪さが難点だろうだけど、顔がなんとかフォローしてくれるよ、きっと。
「……男がいる奴は余裕だな。他には興味ないってか」
「男なんていませんって。恋愛する気が無いだけです」
「なんでだよ。お前、いくつ? そんな達観した女子いる?」
「歳聞くとかセクハラですよ」
達観はしてないけど。
私の癒やしとしては御影石くんがいるし、リアルで恋愛したら辛いことばっかりじゃん。
大体オタクの私を理解してくれる男の人なんているわけがないし、人の話聞いてても、恋愛なんて付き合うまでが楽しいだけで、後は体目あてなんじゃないかってくらい真っ当なデートがなくなったとかさ。
ろくな話聞かないもん。
「誰もが恋愛のことばっかり重要視してると思わないでください」
やがて見えてくる駅の明かり。
助けを得た気分で、顔を上げる。
最後の最後でようやく笑顔が見せられそう。