強引上司とオタク女子



【今日仕事終わったら連絡するね】

【私、今日お休みだからいつでもいいよ。楽しみに待ってる】


家を出て、駅まで向かう間に明日美とメールで会話。

今日お休みかぁ。じゃあ作画とかできたんじゃん。
やっぱ、昨日会ってシナリオ渡したかったなぁ。



そもそも明日美は、昔から一人でこっそりマンガを描いていたらしい。
それを、偶然見つけてしまった私は、彼女の絵に一目惚れしたのだ。

すごく上手だったから、投稿すればいいのにって何度も言った。

でも生来の恥ずかしがりが邪魔をするのか、彼女は一向に作品を世に出そうとしない。

そんな時、絵の描けない私が書いた小説を、明日美がマンガにしてくれた。
すっごく感激して、すっごく嬉しくて、ネットで公表してみようよって言って。

私がIDをとって、投稿をはじめた。
少しずつだけど、感想をもらえるのが嬉しくて、「ファンです」なんて言ってもらえたら有頂天になって。

私は大喜びしたけど、「八重ちゃんのお話が面白いからだよ」って相変わらず明日美は自信がなさそうに自分の物語を公表しようとはしないから。

私は原作を書き続けた。

私の物語なら世に出せるというなら、それでもいい。
明日美の絵を、皆に見せたかった。

やがて私の創作ネタは枯れていく。

やっぱり凡人なんだろう。
一通り書き散らしたらもうネタが降りてこなくなってしまった。

自然と、一次創作より好きなアニメの二次創作を書くことが多くなって、それを見た明日美の彼氏の三笠くんにコミケで売ろうと言われて、一定の売上をあげられるようになって今に至る。


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