強引上司とオタク女子

実際、明日美の絵のファンはもうたくさんいる。
だけど明日美はいつまでたっても自分に自信を持ってくれない。

本が売れるのは、私が書いた話だからとか、三笠くんが宣伝してくれるからだとか言って、縮こまる。

パターナーという仕事も、技術は凄く必要なのに余り表舞台には出ない。
そこがいいのだと明日美は言う。

あんなに才能があるのに、どうして? と思うけど、その理由も私には理解できる。

三次元は怖い。

本音で人と話すと、皆変な顔をする。
傷つけることや呆れられることを気付かずに言ってしまうのが怖いし、言われるのも怖い。

でも明日美の才能を認めて欲しい気持ちもあるから、私は頭を振り絞って原作を考える。

明日美は私の夢だ。

見た目も凡人なら、仕事も凡才。
なんの取り柄もない私の、夢の結晶が明日美。

彼女の作品が評価されたら、私はそれだけでいい。







駅に入り、相変わらず長蛇の列になっているホームを見てため息をつくと、肩を叩かれる。


「よう、おはよう」

「……国島さん? おはようございます」


また出た!
いやあ、なんで会いたくない人に限ってこんなに現れるの。


「おまえ、あと十五分早く出れねぇの? この時間混むじゃん」

「そうなんですか? いつもこの時間なので知りませんでした」


つか。それを知ってるってことはいつもは十五分早く出てるんだよね。
なぜ今ここにいる。

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