強引上司とオタク女子

「もう私達出るところですから! じゃあまた」

「おい待て、俺もそこまで一緒に」


来なくていいよ!

逃げようとしても追ってくる。
めんどくさい上司だよ、ホント。

と思ったところで、ふっと国島さんの手を誰かが掴んだ。

心臓が、ドキンと大きく全身を揺るがすように鳴る。


「ナンパなら他所でしてくれます? これ、俺の彼女ですから」


そこにいたのは、明日美の彼氏・三笠くんだ。

相変わらずの整った顔立ちに不愉快そうな色をのせている。

うわーそんな顔でもやっぱ格好いいな。
背も高くて、さらさらと流れる髪が輝きを放っているみたい。
スーツ姿の国島さんに対して、三笠くんはTシャツにパーカーという普段着なのにそれでも見劣りなんか全然しない。

国島さんは一瞬ぎょっとした顔をしたものの、三笠くんに「どっち?」と聞く。


「こっちです」


迷いもなく明日美の手を取る三笠くん。


「じゃあ問題ない。俺の目当てはこっち」


同じように私の手を取る国島さん。

目当てじゃないよ。つか離せ-!
私はブンブンと手を振って抵抗した。


「……なんだ、川野の彼氏?」

「違うよ!」

「でも迫られてるんだろ? つか、川野、久しぶり」


戦隊ヒーロー役の俳優にも似た甘いマスクで笑いかけられるとドキドキする。

落ち着いて、私。
確かに三笠くんにはずっと憧れているけど、彼は明日美の彼氏だ。完全恋愛対象外。

< 36 / 87 >

この作品をシェア

pagetop