強引上司とオタク女子
「もう私達出るところですから! じゃあまた」
「おい待て、俺もそこまで一緒に」
来なくていいよ!
逃げようとしても追ってくる。
めんどくさい上司だよ、ホント。
と思ったところで、ふっと国島さんの手を誰かが掴んだ。
心臓が、ドキンと大きく全身を揺るがすように鳴る。
「ナンパなら他所でしてくれます? これ、俺の彼女ですから」
そこにいたのは、明日美の彼氏・三笠くんだ。
相変わらずの整った顔立ちに不愉快そうな色をのせている。
うわーそんな顔でもやっぱ格好いいな。
背も高くて、さらさらと流れる髪が輝きを放っているみたい。
スーツ姿の国島さんに対して、三笠くんはTシャツにパーカーという普段着なのにそれでも見劣りなんか全然しない。
国島さんは一瞬ぎょっとした顔をしたものの、三笠くんに「どっち?」と聞く。
「こっちです」
迷いもなく明日美の手を取る三笠くん。
「じゃあ問題ない。俺の目当てはこっち」
同じように私の手を取る国島さん。
目当てじゃないよ。つか離せ-!
私はブンブンと手を振って抵抗した。
「……なんだ、川野の彼氏?」
「違うよ!」
「でも迫られてるんだろ? つか、川野、久しぶり」
戦隊ヒーロー役の俳優にも似た甘いマスクで笑いかけられるとドキドキする。
落ち着いて、私。
確かに三笠くんにはずっと憧れているけど、彼は明日美の彼氏だ。完全恋愛対象外。