強引上司とオタク女子
「久しぶり。でも、明日美といると三笠くんの話ばっかり聞くから、気分的には久しぶりでもないんだよねー」
「マジ? そうなの? 明日美」
「や、違う。そんなこと無いよ」
嬉しそうに笑う三笠くんと顔を真っ赤にする明日美。
「大体、なんで俊介くんがここにいるの」
明日美が小首をかしげて彼の名前を呼ぶと、しれっとした顔で答えた。
「バイトも昼あがりだったし、稽古に行ってたんだけど、今日は人が集まらなくてさ。川野と会うって言ってたから、俺も久々に会いたいなーって思って」
嘘。
私に会いたいなんてかけらでも思ってくれたんだ。
思わず口元が緩んで、はっと気づいて国島さんを見つめると、彼は意味ありげに私に目配せする。
何よ、その顔。
嫌な予感しかしませんけど。
「あ、でも。話はだいたい終わったんだ。明日美、三笠くんと帰る?」
「なんだよ。まだいいだろ。一緒に飲もうと思ってたのに」
「いいね。俺も混ぜてもらっていい?」
調子にのってくる国島さん。
ちょっと待てよー!
私と明日美と三笠くんとでなら飲んでもいいけど、明らかにあなただけ余分でしょうが。
「いいっすけど、俺らの会話大分アニメよりっすよ。オタクなんで」
サラリと言っちゃう三笠くん。
あああああ。
そうだよね、アンタはオタク隠してないもんね。
「おっけおっけ。ちょうどそういうの勉強しようと思ってたとこ。俺の知ってる店近くにあるんだけど」
恐るべしコミュニケーション力を発揮した国島さんは、渋る私を引きずるようにして、歩き出してしまった。