強引上司とオタク女子


十分ほどしてからデスクに戻った。

長い休憩になっちゃったから人の視線が怖いなーと辺りを見回すと、長方形に固められたデスクの一番北側に座る国島さんはすでに戻っていた。

じゃあ梨本さんは、と隣のデスクの島を見ると、いない。
隣に座っているはずの彼女の教育係である山田さんもいないから、もしかしたら泣いて慰めてもらってるとかそういう状況になっているのかもしれない。

まあいいや、私には関係ないしね。

しらばっくれて席に戻ると、お尻を椅子に付ける寸前に鋭い声が飛んで来る。


「なんだこのマニュアル。作ったのは誰だ。川野か? ちょっと来い!」

「え? はいっ」


国島さんから漂う不機嫌オーラ。

書類をバンバン叩きながら威圧感たっぷり。
さっきまで修羅場を演じてた人とは思えない。

怖い、怖いって。


「すみません。どこがいけなかったですか」

「どこもかしこもダメだ」


カチーン。
身も蓋もない言い方すんなや。

マニュアルづくりなんて今回初めてだし。
でも、皆がこれを盛り込んでって言ってた内容は全部入れ込んだぞ?

目の前の国島さんはグチグチと文句を続けている。

うるさいな男のくせに。
ちょっと細かすぎじゃないの。

普段から鬼のようだなとは思っていたけど、今日は特に酷い。
きっとさっき覗き見しちゃったことが尾を引いているのだろう。


どうなの、社会人。
心狭すぎじゃない?


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