強引上司とオタク女子
「川野」
「なんですか」
「お前、さっきの三笠くんが好きなんじゃねぇの?」
息がかかるくらいの近い距離で、そんなことを聞かれて。
目をそらしたくても逸らせない。
加えて今私は酔っ払いなわけで。
涙腺も緩んでるんだよ、仕方ないじゃん。
「うっ、……もう、うるさい、国島さん」
「げっ、泣くな」
「泣かせといて勝手なこと言わないでよ、……えっ」
湧き出てきた涙は、今度は止まらなくなった。
「仕方ないじゃん。ずっと明日美のことしか眼中にないもん」
「でも告れば違ったかもだろ」
「そんなこと出来ない。明日美は親友だもん。私あの子大好きだもん」
「ホントの親友ならまた仲直りできるだろが」
「国島さんはあの子のこと知らないからでしょ。才能あるのに、自信なくて、人のことばっかりで。私がそんなこと言ったら二人別れちゃう」
明日美にとっても私は親友だから。
あの子はきっと私をとる。自分が不幸になっても。
そういう子だって知ってるから、私の本音は心の奥底に埋めて、ずっとずっと黙ってた。
「もうやだ。国島さん嫌い。大っ嫌い」
「川野、すまん」
「今更謝ったって遅いし。もうやだー!!」
こんな醜態さらしてさ。
上司の前で大泣きして。
プライベート晒して。
なんでこんなことになっちゃったの。
わんわんと声を上げて泣いていたら、ほとほと困ったように国島さんが頭をかいた。