強引上司とオタク女子
「今、順次電話をかけてるが、日程的にキツイと断られるものが多いな」
「見せてください。ヒーローショーならバイトでこなしている人もいるはずなので、実績がないところでも劇団員の中にはできる方もいます」
リストの中から、記憶にある劇団名をあぶり出していく。
入社以来、事務仕事ばっかりやっていたせいか、こういうのは得意だ。
以前ヒーローショーをやってもらった劇団、バイトで入ってもらった役者志望さん、残っている連絡先を辿っていく。
片っ端から電話をかけてもらうけど、どこも日程が合わない。
八方塞がりかと思ったその時、不意に三笠くんの顔が浮かんだ。
そうだ。
知り合いに無理難題を押し付けるのは気が引けるけど、三笠くんなら昔ヒーローショーもやってた。
舞台度胸は申し分ない。記憶力も彼は良かったはず。
「国島さん! 三笠くんに頼んでみます」
「三笠ってこの間のやつだよな」
「日程さえ合えば彼なら出来ます」
社内の人が見つめる中、私は彼に電話をかけた。
すぐに繋がり、内容を説明すると、三笠くんの劇団が今稽古しているのは十二月の舞台で、日程的には余裕があるから大丈夫と言ってもらえた。
『ただ、バイト入れてる奴も多いから、何人捕まえられるかはわかんねー。何人必要なんだ? ヒーローが三人?』
「あと、敵役に五人、司会のお姉さんが一人」
『かき集めてみるよ。版権は大丈夫なんだよな』
「それは抑えてはある……はず」