強引上司とオタク女子
*
とりあえず私の出番は終わったようなので、帰ろうと立ち上がると、国島さんが追ってきた。
「川野、ありがとうな」
「いえ」
「あと十分待てよ。一緒に帰ろうぜ」
「嫌です。帰ります」
「うわ、冷てー」
不満そうに唇を尖らす国島さんを振り切ってきたはずだったのに、どこでどう頑張ったのか、彼は乗換駅で追いついてきた。
「……うわ、ストーカー」
「失礼なことを言うなよ。上司に向かって」
息を切らしながら言われても困っちゃうんだけども。
仕方なく、一緒に電車に乗り込む。まあ三駅の我慢だ。
「降りたら飲みにいかないか」
「嫌です。そういう気分じゃないんですよ」
「ヨーグルトの点数やるから」
「それだけじゃ釣られないです」
「じゃあどうすれば俺と来る?」
手首をぐいと掴まれて、驚いて彼を見上げる。
電車内は座席が埋まる程度には混んでいて、車両の端で立っているとはいえ、こんな風にもみ合っていたら人目を引くからやめて欲しい。
「電話の途中から様子がおかしいよな。なんて言われた?」
「なんでもないです」
「なきゃそんな顔してないだろ」
そんな顔ってどんな顔だよ。
自分でも自分がわからないよ。
「『他ならぬ川野の頼みだから』って言われただけです」
「いいじゃん。なんでショックなわけ?」
「ショックってわけじゃ……」
逆だ。私はそれを嬉しいと思ってしまった。
明日美の彼氏に対して、思ってはいけないことを思ってしまった。
「こら」
眉間を指で触られる。
とりあえず私の出番は終わったようなので、帰ろうと立ち上がると、国島さんが追ってきた。
「川野、ありがとうな」
「いえ」
「あと十分待てよ。一緒に帰ろうぜ」
「嫌です。帰ります」
「うわ、冷てー」
不満そうに唇を尖らす国島さんを振り切ってきたはずだったのに、どこでどう頑張ったのか、彼は乗換駅で追いついてきた。
「……うわ、ストーカー」
「失礼なことを言うなよ。上司に向かって」
息を切らしながら言われても困っちゃうんだけども。
仕方なく、一緒に電車に乗り込む。まあ三駅の我慢だ。
「降りたら飲みにいかないか」
「嫌です。そういう気分じゃないんですよ」
「ヨーグルトの点数やるから」
「それだけじゃ釣られないです」
「じゃあどうすれば俺と来る?」
手首をぐいと掴まれて、驚いて彼を見上げる。
電車内は座席が埋まる程度には混んでいて、車両の端で立っているとはいえ、こんな風にもみ合っていたら人目を引くからやめて欲しい。
「電話の途中から様子がおかしいよな。なんて言われた?」
「なんでもないです」
「なきゃそんな顔してないだろ」
そんな顔ってどんな顔だよ。
自分でも自分がわからないよ。
「『他ならぬ川野の頼みだから』って言われただけです」
「いいじゃん。なんでショックなわけ?」
「ショックってわけじゃ……」
逆だ。私はそれを嬉しいと思ってしまった。
明日美の彼氏に対して、思ってはいけないことを思ってしまった。
「こら」
眉間を指で触られる。