強引上司とオタク女子
「私を見てくれないことは分かっているからいいんです。振られるの分かってて告白するほどマゾじゃない。私はむしろ、早く彼と明日美に幸せになって欲しいんです。……私には二次元の世界があればそれでいいんです。御影石くんがいればそれで」
「ここでお前がいいって言ってる男がいるのにか? そりゃ随分俺に失礼な話だ」
「なんでですか」
「あんな二次元ヤローに負けるなんてゴメンだってことだよ」
電車の中での言い合いに幕を引いたのは、到着メロディだ。
ホームに降りて、気まずいまま黙っていたら国島さんがようやく私の手を離してくれた。
「お前がそこまで意地張るなら分かった」
「え?」
「勝手にしろ」
そのまま、駅の北側に向かってしまう。
こんな風に放っておいてもらえることを、私は望んでいたはずなのに。
実際にそうされると、なんでこんな変な気分になるんだろう。
秋の風が私の周りを流れていく。
無性に寒いと思ってしまった。