強引上司とオタク女子
やがて、ヒーローショーが始まる。
司会役のお姉さんの声が高らかに響いて、小学生低学年から下くらいの子どもたちとその保護者が一斉にステージを見た。明日美は前列の端の方の席で、真剣に見てる。
三笠くんの役はレッド。一番中心になるヒーローだ。
轟音とともに、悪の手先がやってきてお姉さんをさらっていく。
それを助けに来るのが三人組の戦隊ヒーロー。
割とお約束な流れの脚本だけど、アクション演技が真に迫ってて皆息を飲んでいる。
格好いいよなぁ。
顔が見えなくたって、三笠くんはやっぱりヒーローだ。
ヒーローには、お姫様が似合う。
明日美みたいな、守ってあげたくなるようなタイプが一番似合ってる。
だから私はずっと諦めてきたのに。
なんで今になってこんな風に悩まなきゃなんないのよ。
ふと、視線をずらすと国島さんが真剣な顔でステージを見てる。
きっとこの人のせいだ。
好きとかなんとか言って、私を三次元まで引きずり下ろしたから。
二次元の世界で、ずっと楽しくしていられたのに。
三次元の世界になんかいたくないのに。
それでも私は現実に生きて人間と触れ合える生き物なんだと、気付かされてしまった。
割れるような拍手の音に、我に返る。
舞台袖に戻ってきた三笠くんは、マスクを脱いではーっと息をついた。
「どうだった? 川野」
「すっごいよ。最高だった。」