強引上司とオタク女子
「三笠くん?」
指定された場所で見回してみても、人気はない。
門が閉まる十九時までには出ないと怒られるのに、困ったな、これから人探しとか大変……
「やあ、お嬢さん」
背中に、三笠くんの声。
だけどいつもより声のトーンが低い。
それにこの言い方、まるでドリーム探偵・ミカゲみたいな。
「……ミカゲ?」
振り向くと、そこにいたのは、御影石くんだった。
ううん。正確には、御影石くんのコスプレした三笠くんだ。
「どうしたの、その格好」
「いいだろ。明日美に作ってもらったんだ」
さすがパタンナー。コスプレ衣装も思うがままだな。
でもなんで、それを私に見せるの?
「川野の会社の先輩? クニジマさん? に頼まれたんだ」
「何を?」
「川野を開放してくれって」
「は?」
開放ってないよ。私は拉致も監禁もされてませんけど。
「俺も、いい加減明日美の意地っ張りをなんとかしたかったし。丁度いいなと思って」
「意地っ張り?」
明日美が?
なんなの訳がわかんないよ。
三笠くんがスッと息を吸った瞬間、顔つきが変わった。
見かけはおんなじはずなのに、表情や仕草が、“ミカゲ”になる。
「ミカゲの推理に間違いはない。だって俺は夢のなかに入り込んで、本人の深層心理を読むのだから」
ミカゲのお決まりのセリフ。
私はこのセリフを聞くと謎解きの始まりにいつも興奮する。