強引上司とオタク女子
「おそらく後ろめたいんだろ。先に幸せになるのはズルいと思ってる。だから川野が幸せになるまでは結婚はしたくないんだ。馬鹿だろ」
「……なにそれ」
「それでも納得がいくまでは待ってやろうって思うくらいには、俺も明日美に惚れてる」
とても素直に、明日美への気持ちを告げられて、逆にスッキリする。
言っても仕方ない、どうせ叶わないって思っていたけれど、大事なのは叶う叶わないじゃなくて、ただ、言葉にすることだったんじゃないの?
「……私、三笠くんが好きだったよ。憧れてた」
だってほら。
足がガクガクして目も潤んできたけど、彼はちゃんと私の話を聞いてくれる。
私の気持ちはちゃんと形になって、たとえ叶わなくても次の場所へ向かえるじゃない。
「うん。ありがと。……でも過去形だろ?」
「凄いね、なんでも分かるんだ」
「まあね。……俺を誰だと思ってる? ドリーム探偵ミカゲだよ?」
最後に、再び“ミカゲ”に扮した三笠くんを見て、私は笑い出してしまった。
「やっぱ格好いい、ミカゲ、最高」
「だろ? さ、君はもう自分の心が見えたはずだ。……行き先は分かるだろ?」
「うん!」
そのまま、踵を返して走りだす。
私の最初の恋は、ずっと形になることが出来ないまま、深い心の奥底へ潜り込んでしまった。
それを今引きずり出して、空間になった場所には新しい想いがある。
いつの間にか。
私の中に入り込んでくるなんてズルいよ。
国島さんのせいだ。
いつの間にか、私はあなたがいなきゃ寂しいって思うようになってしまった。