強引上司とオタク女子
「やっと捕まえた」
「ちょ、ミカゲがっ」
「ミカゲより生身がいいだろ」
「いや、これはこれで大事です。やっと応募出来ますし」
「あっそ」
呆れたような声を出しつつ、彼は私を離してくれない。
大きな体、強い力。
生身の男の人と抱き合ってるんだ、私。
うわあ、この状況どうすればいいのー!
「は、離してくださいっ」
「懸賞、外れたら俺が抱きまくらになってやるよ」
抱きまくらって、あれってふにゃふにゃしてるのがいいんじゃないの?
こんな硬い体じゃ癒やしにはなんないよ。
「……それは結構です」
「何っ?」
目を剥いて怒る国島さん。
私は思わず笑ってしまって、そうしたら顔の前に影が降りてきた。
「……っ、ん」
熱い唇が、私の呼吸を止める。
今日はコーヒーの香りがする。
キスってこんなふうに味が変わるものなんだ。
力を抜いてされるがままになっていると、何度も角度を変えて吸い付いてくる。
うん。なんか、初心者にするチューじゃない気がするの。
「く、にじまさん、ストップ」
「なんで」
なんでじゃないよ、野獣!
「ビギナーなんで勘弁して下さい」
「はぁ? ……ったく、仕方ねぇな」
そして、私の頭をくしゃくしゃっと掻きむしる。
「……惚れた弱みだ。我慢するよ」
うん。ちょっとキュンとしますわ、そのセリフ。
いつかネタに使おうと思います。