強引上司とオタク女子
「いいから、送らせろよ」
なぜ脅されるようにして歩かねばならないのか。
全く理不尽。
大体国島さんは手が早いから気をつけなきゃ。既に二回もチューも奪われているわけでね。
だけど、二人で並んで歩くのは嬉しい。
誰かに心配されたり大事にされたりすることで、私にも価値があるように思えてくる。
ずっと、私は明日美に夢を託していたけど、それって明日美に重たい荷物を背負わせてるってことなんだよね。
私は私で輝こう。
そうしたら、明日美も余分を取り払って自分らしく輝けるはずだ。
とりあえず、帰ったら明日美に電話しよう。
何から話せばいいか迷うけど、
昔、三笠くんが好きだったこと、でも明日美のことも大好きだってこと。
そして今、新しく好きな人が出来たってことを。
やがてたどり着くアパート。
鉄筋造りだけど、外壁にレンガが施されておしゃれなところが気に入っている。
「アパートここです。ありがとうございました」
「へぇ。なかなかいいじゃん。俺も南側に住めば良かったな」
「嫌ですよ。そんな朝から晩までベッタリしてんの」
「ちぇ、つれねぇ女だなぁ。まあいい、また電話する」
ちゅっと、軽いキスが頬に落ちる。
人前でチューとか外国人かよ。
彼は身を翻して、爽やかに走りだした。
一人ドキドキしたまま取り残される私は一体どうすりゃいいんだか。
でも、こんなハッピーエンドなら、三次元の恋も悪くないかも知れない。
【Fin.】