強引上司とオタク女子
番外編
『許可は事前にお願いします』
沢山の人の夢や希望や感情を受け止め、日本中に運んでいく入り口である赤くて四角いあなた。
どうか、私のお願いも届けてください。できれば当たりで!!
「当たりますように!」
赤いポストの前でお祈りする私に、周りを歩く人々の視線が痛い。
でもね、ここで恥ずかしがってたらハズレる気がするのよ。
ようやく顔をあげ、さあ駅に向かおうとした時に、目の前にお腹を抱えて笑いを噛み殺している人がいる。
全身の血の気が引いて行く音が聞こえた気がした。
「く、国島さん!」
「おまっ……、拝むとか……、マジか」
うるさいよ。
本気と書いてマジなの。どうしても欲しいの。
アニメの大人気キャラ、ドリーム探偵ミカゲこと御影石くんの抱きまくら。
そのための神聖なる儀式だよ。ポストに敬意を払って何が悪い。
「大体、なんで国島さんがここにいるんですか。あなた駅のあっち側じゃないですかっ」
いつまでもヒーヒー笑う国島さんの背中をどついたら、ようやく笑うのをやめてくれた。
「せっかく彼女が近くに住んでるんだから迎えに行こうっていう男心だろ」
「か、彼女……?」
「そうだろ? 俺はお前の事好きって言ったし、お前もそう言ったじゃん。キスもした。ほら、両思いじゃん。俺はもう付き合ってるつもりだったけど」